「寂しいときは泣いていいんだよ」
最近、母がよく夢に出てくる。
以前は姿が見えるだけだったり表情を確認できる程度だったが、徐々に話し声がしたり、会話をしたり、夢の中で長い時間を過ごすようになった。
一度にいろんな夢を見て、どちらかと言うと覚えているほうだが、今日は従兄がなくなった夢を見た。架空の従兄で、葬式までの家にいる期間、湯灌前くらいを描いているようだ。少し黄色く、鈍い色になった顔や身体が遠目に見えて、目を伏せた。
遺体が家に戻ってくると、せわしない。世話焼きでしきたりを大切にする母は、存命のおばと家の中のタオルやら何やらをかきあつめはじめた。
ーーそのおばも、他の親戚も、母がもういないことは知っているのに。
葬儀になると、なくなった人も現れて、家の中で手伝う、といった設定らしかった。ただ話しかけることは許されず、見て見ぬふりをしなければならなかった。
その様子を見て父が、「寂しいときは泣いていいんだよ」と、私に声をかけた。
ここで目が覚めた。
「お母さんに会いたい」
このことで胸がいっぱいになって、目が覚めてすぐ声をあげて泣いた。お母さんに会いたい、お母さんに会いたい、お母さんに会いたい……落ち着け自分、深呼吸しろ、そう自分に声をかけられるまで時間がかかった。こんなに頭に余裕がないこともあるのだろうか、胸で泣くような 、おえつで気管支の奥に痛みを覚えた。
落ち着け落ち着け、今日は休めないから……
気を紛らすのにテレビをつけた。出来すぎた偶然で、「お母さんの支えで頑張っているんですね」という男性の声が、テレビがついた瞬間クリアに入ってきた。ゴルフ選手の練習風景を伝えていたようだった。
160629