空飛ぶさんしょううお

北から都会に出て来て根っこのはえつつある、しがない会社員の落書き帳です。ノスタルジックだったり頭でっかちだったりしながら思う存分好きなことを好きな表現で書きます。

飲み会ぶっちぎり

飲み会を"ぶっち"した。

会社の飲み会だった。皆で移動する時間に耐えられなくて、遅れて行く選択をした。仕事を粗方済ませ、お手洗いに立ち寄った。飲み会の前は必ず、化粧直しをする。アイラインと口紅を整えた。足は依然として重たく、胸の奥はどろどろとした重たい液体を溜め込んだようにずっしりとしていた。1階に降りるまでに決めよう、エレベーターで降りて、裏口から出たとき、足は行く予定だった場所と反対を選んだ。

帰ろう。

決めた瞬間、胸のどろどろが涙として身体の上部に押し上げてきた。そのまま、吐きたかった。ここ数日気持ちを和らげるために、信じられないくらい食べた。食べ終わっても、ヨーグルトやらジュースやらを摂取し続け、もう入らなくなると、ひたすら飴を噛み砕き続けた。隙間という隙間に口にできるものを詰め込みまくった。胃が気持ち悪くなり、次第に鈍いヒリヒリ感が胃壁を襲った。空気のような、何かがまずはじめに込み上げて、嗚咽だけが漏れた。情けなくなる。吐き出せない気持ち悪さと共に居なければならない。自分がむしゃくしゃして口に食べものを頬張り続けたせいで。自制に欠けて馬鹿らしい。

そして何より、立てる必要のない波風を立ててしまったこと。私が何気なく少しの辛抱で参加すれば、それかもともと行かないことになっていれば、当日になって来なかったことなんか目立たないのに。いや、誰も何も思っていないかもしれない、ただの自意識過剰かもしれない。あんなにお酒が好きで飲み会でわいわい騒ぐイメージの人間がたかが1回ドタキャンしたくらいじゃ、誰も何も、思ってくれないかもしれない。でもそちらのほうが良かった。整理のつかない気持ちのなかでも、ばれたくないとは思っていると思う。心にずっといる、ふわふわして視界を曇らせる灰色の物体。大きくなったり身を潜めたり、時に影を濃くして攻撃的になったり、薄く脳内全部を浸々にして、正常な思考を奪ったり。

ただ、この朦朧とした頭を抱えたまま右にも左にもいけなかった時間を抜けたように、涙を流せたことが、少しの救いだ。涙がでかけたとき、泣かないと、と思った。出るうちに出しきらないと、次にいつこの灰色を透明にできるか分からないから。

家の最寄り駅の文字を見て落ち着いた。家路を進むにつれて心が解きほぐされるような感覚になった。あー、家って、意外と落ち着いているんだな。落ち着ける場所があって、よかった。


160603