空飛ぶさんしょううお

北から都会に出て来て根っこのはえつつある、しがない会社員の落書き帳です。ノスタルジックだったり頭でっかちだったりしながら思う存分好きなことを好きな表現で書きます。

母の日

なぜかここ最近母の夢を見る機会が増えた。
また、微睡みのなか、骨にかわる母の姿を思い出し急に眠気が覚めることもあった。

母の日が過ぎるのを静かに待っていた。今年のプロモーションは、4月半ばの早めの時期からはじまった。数年前から流行りだしたプリザーブドフラワーは、すっかり市民権を得た。あまりにも高価な、ミイラ化した花は最前面に陳列されていることから見ても、店側として売らなければならないこと、しかしそれなりに売れてもいることが見受けられる。私もまた、それを手に取った。プラスチックのケースのなかで、息をしているかのような表情で死んでいる綺麗な花を。例年、母の日に何かしら購入していた癖で、何も買わないことができないよう、身体にシステムを組み込まれたようだった。私は土曜日午前中着で、田舎に郵送する手配まで済ませた。

その店では、メッセージカードがサービスになっていた。レジ横に設置されたテーブルに小さく切り取られた白い画用紙と共に、様々な色のペンが置いてある。徐に黒いペンで本当に短く、ひとこと書いた。"Dear mama" とか、そんなことだったと思う。そのメッセージに、毎年描き古しのカーネーションを、素早く荒く添えた。

簡単な彩飾を施したものを店員に渡し、宅配伝票の欄を埋めた。私は伝票に、故人の名を記した。店員は、私がメッセージをしたため、プレゼントを送ろうとしている相手がもうこの世にいないことを知らない。いや、もしかしたら耐えきれず溢してしまった涙のせいでばれたかもしれない。


160508-18