空飛ぶさんしょううお

北から都会に出て来て根っこのはえつつある、しがない会社員の落書き帳です。ノスタルジックだったり頭でっかちだったりしながら思う存分好きなことを好きな表現で書きます。

実現性ゼロの脳内シミュレーション

世の中は皮肉だらけだ。

思い通りにいく妄想だけをひたすらして、極めた結果通りにすんなりいくことなんてあり得ないのだ。そのギャップに毎度落胆して、無力で憧ればかり強い自分を忌み嫌う。それでも、脳内シミュレーションは止められない。美しいドラマの中の主人公になりたい。理想でいうなら、優しく注ぐ笑顔が端麗な女性になりたい。ストーリーは悲しくても良い。涙をきれいに流す女性でありたい。口数の少なく、押しとやかな、か細い女性になりたい。しかしそれは叶わないのだから、頭のなかでせめての自分から描ける最高のストーリーの草稿を何度も書き直す。熟成され、濃縮され、ディテールはさらに細かくなり、その代わり不要な描写はどんどん消される。最高の仕上がりと類似した場面に出くわしたとき、私は驚くほどシャイで天の邪鬼だ。ひねくれた気持ちで、思った通りの運びに出来ない。所詮実現を求めたシミュレーションではない、ただの妄想なんだ。練り倒した発想は、実現しなくても良い。満足してしまうのだ。実行する前に、疲れる。

だから私はずっと、誰にもばれずに小さな主人公を続けられるのだ。


160426